白小豆「福とら白」について
和菓子の主な原材料は、小豆や寒天などの植物性の天然素材。生菓子などの白餡に用いられる白小豆もその一つです。虎屋が主として使用している白小豆は、「福とら白」という独自の品種。虎屋の味を支える大切な原材料の一つとして、古くから契約栽培を実施しており、主に、群馬県や茨城県で生産されています。白小豆は、虎屋の菓子づくりには欠かせない原材料ですが、栽培の難しさや生産者の方の高齢化などの問題のため、その収穫量は決して多くありません。 おいしい菓子をつくるためには、最良の原材料を安定的に確保することが重要です。希少原材料である白小豆への取り組みをご紹介します。
白小豆とは
白小豆とは小豆の一種で乳白色の種皮を持った豆です。まろやかで上品な味わいと、さらりとした後味が特徴です。虎屋では羊羹や生菓子、お汁粉や最中など様々な商品に白小豆を使用しています。
虎屋が主に使用している「福とら白」という品種は、土壌や天候の影響を受けやすいうえ、播種から収穫まで、生産工程は手作業中心に行なわれることから、生産量の限られた希少原材料です。
契約栽培
虎屋では昭和2年(1927)より、希少原材料である白小豆を質良く安定的に確保するために、契約栽培を開始しました。生産者の方と直接に契約を交わすことにより、顔のみえるコミュニケーションを図っています。虎屋の菓子づくりへの想いを直に共有し、生産者の方々の悩みを直接伺うことのできる関係性を築き、ともに課題を解決していけるよう交流を重ねています。現在、産地には、栽培の指導や支援を担当する嘱託社員を一名配置。原材料調達部門の社員も定期的に訪れ、品種改良や農業指導の場を設けています。一方で、白小豆は特定の農業機器などがなくても栽培可能なため、栽培に少しでも興味を持っていただけるよう、さまざまな地域で普及活動を行なっています。
栽培体験
原材料調達部門の社員のみならず、製造部門の社員や、近年は販売職や事務職など、部門を問わず多くの社員が播種や刈り取り作業の体験をしています。実際に原材料を使い菓子づくりをする製造部門はもちろんのこと、菓子をお客様にお届けする販売職の社員も、白小豆の特性や生産者の方々の苦労を知ることで、「原材料を育ててくださる生産者の方々がいなければ菓子屋は成り立たない」ということを自覚し、それぞれの業務の中で経験を生かしています。
品種登録と改良
2018年2月、虎屋が使用している白小豆は農林水産省により独自の品種「福とら白」として品種登録されました。民間による小豆の品種登録は初となります。虎屋が契約栽培を開始してから、長らく栽培と収穫のサイクルを繰り返してきたなかで、同じ種の白小豆の中にも複数の系統が存在していることが、2007年の調査の結果分かりました。そこで、一定の品質の白小豆を安定的に確保するために、有望な株を選抜し、系統の統一化を図りました。品種登録後も、茎が地を這うように育つため機械での刈り取りが困難であったり、収穫期が遅い晩生品種であるため霜や雪の影響で品質を落としやすいといった課題があり、品質・味はそのままに、より栽培しやすい品種の開発に取り組んでいます。
白小豆ができるまで
- 生産スケジュールは群馬県の主な生産地の基準日です。
1. 播種
7月の上旬頃に行ないます。天候を読み、快晴が続く日を見極めます。
2. 発芽
7月の中旬頃に芽が出ます。雑草や病害虫などの害を一番受けやすい時期でもあります。
3. 開花
青々と葉を茂らせながら成長し、8月の下旬頃に黄色い花が咲きます。
4. 収穫
白小豆が実る11月の中旬頃、一つひとつ丁寧に、手作業で刈り取ります。
5. 乾燥
刈り取った白小豆は、脱穀をしやすくするため、数日間畑で乾燥させます。
6. 脱穀
脱穀機にかけて、茎や鞘(さや)をはずします。写真左下の袋に白小豆が入っていきます。
7. 選別
収穫した中から、粒の大きいもの、色の鮮やかなものを手作業で選り分けていきます。
8. 選別の結果
つやがあり美しく、粒の揃った白小豆は、このように手間ひまかけた工程を経て生まれます。