社長挨拶
虎屋は室町時代後期に京都で創業し、五世紀にわたり和菓子屋を営んできました。虎屋の経営理念は「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」。これは、創業から今日に至るまで、虎屋に脈々と流れてきた姿勢でもあります。いつの時代も、職人の熟練した技術でお客様に喜んでいただける菓子をおつくりしたい、そして、日々ひたむきに菓子に向き合い、上質な菓子やサービスを提供できる菓子屋でありたいと思っています。
当店で販売している菓子の中には、元禄8年(1695)の菓子見本帳に記録が残る菓子など古くからおつくりしているものも多くあります。時代を超え、菓子とともに、そこに込められた文化や物語をお客様にお届けすることは、菓子屋だからこそできることであり、わたしたちにとって大きな喜びです。しかしながら、長らくご愛顧いただいている菓子であっても、時代と共に技術が進化している中、現状に満足することなく、日々試行錯誤を繰り返し、よりよい菓子づくりを追求しています。昨日良かったものが今日も良いとは限らない。常にそういう思いを持ち続けることで、わたしたちの技術は進歩し、新しい菓子が生まれていきます。
虎屋の500年の歴史を振り返ると、さまざまな変革期がありました。そして、今わたしたちが生きている時代も、まさしくその只中にあります。人と人とをつなぐコミュニケーションの手段も大きく変化を遂げ、世界各地の情報、技術、素材などを容易に入手できる時代です。このような時代の中にあるわたしたちは、500年間受け継がれてきた伝統を大切に守りながらも、今手に入る最高の原材料と技術を用い、よりおいしい菓子をおつくりし、世界中のお客様にお届けする。それこそが、わたしたちの大切な使命だと思っています。
「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」。この言葉を常に問い続け、今もこれからも、愚直に、誠実に、菓子づくりに励んでまいります。
代表取締役社長
黒川 光晴